#10.. 未知なる肥満児との出会い |
| Update : 2005/07/02 15:21:00 |
線路を挟んで向こうのホームでは、青年がカメラを構えている。どうやら電車がホームに入ってきたところを写すつもりらしい。
(鉄道マニアだろうか?)
ふと、駅のホームで電車を待っていて、何気なく左を向いた。そこには少し太り気味の、若い男がこちらを向いてニヤニヤしている。
(何だろう? 知り合いだろうか?)
頭の中で検索に掛けてみたが、該当者はいない。
長老の後輩に、毎日昼食にカップラーメンを食う事を至福としているOWのトムがいるが、そいつと違って目が大きい。
私は不審に思いつつ観察していると、そいつは突然、ラーメンをすするジェスチャーをし始めた。私は周囲を見渡した。だが、その肥満児の方を向いている人は一人もいない。どうやら、私へのメッセージのようだ。
私はそこで、突如思いついて鞄のファスナーを開けた。
(しまった! DVDを返却し忘れた!)
それは昨日、当日返却でレンタルしたため、今日の開店時間の10時までに返却ボックスへ入れなければならなかったのだ。
現在時刻と現在位置を確認するまでもなく、間に合わない状況である。延滞料金を支払わねばならない。
(どうしよう、困った)こんなときはアンパンマンに頼るしかない。
今のところ、DVDを返却していないという事実に気が付いているのは、私とあの忌々しい肥満児のみだ。
奴を消し去れば、この事実は消え去る。
(やるしかない!)
“MMはアンパンマンをよんだ”
“しかし、なにもおこらなかった”
当然のことながら、アンパンマンはやってこなかった。
私は不機嫌と驚愕を顔に出さぬよう努力し、決して例の肥満児を見ないようにして電車に乗った。
電車に乗って、私は決心した。
次回は決して忘れないように、アンパンマンの召喚方法を覚えることを。
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