#01.. いと高き所におわす者 |
| Update : 2005/07/02 15:21:00 |
今は昔、私は高校生。
しかし、それが過去の現実なのか、それとも現在の私の頭に存在する過去の思い出なのか、当の本人にさえ判断できずにいた。
私は高校の帰りに、友人のクーポンと駅のホームで電車を待っていた。
すると、丁度クーポンの立っている頭上の蛍光灯の笠の上に、天空より一羽の鳩が舞い降りた。
確か誰かが言っていた。某映画監督の作品には必ず鳩が飛ぶシーンがあるのだと。私はそんなことをぼんやりと考えながら、ただ鳩を見ていた。ところが、クーポンは私とは違ったようだ。
クーポンはその後起こる事を予測したかのように、鳩が上から落とした糞を紙一重の華麗なバックステップで回避した。
まるで、マトリックスの1シーンの様であった。
しかし、彼が不敵な笑みをその人懐っこい顔に浮かべた瞬間、私とクーポンは鳩の真の目的を知ることになった。
クーポンよりも鳩の方が一枚上手だったのだ。
彼がかわしたことによってできた空間を通過し、彼の足元に置いてあった学生鞄に、その白き無慈悲なる一撃が命中したのだった。
夕暮れ時の駅のホームで、この世のものとは思えない慟哭の重低音が、大地を震撼させたのであった。
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